バレエの下肢障害 臼蓋形成不全、変形性股関節症

投稿:2022.05.18 / 16:23 

バレエの下肢障害 臼蓋形成不全、変形性股関節症

臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)とは

股関節は、大腿骨骨頭(大腿骨の上端の球状の部分)が臼蓋(骨盤側の大腿骨頭の受け皿となる部分)に深くはまり込んで形成されています。
臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)とは、本来は深く窪んでいるはずの臼蓋(骨盤の受け皿の部分)が生まれつき浅い形状をしていることです。

臼蓋形成不全の形態をしていると、関節の接地面が狭いため、荷重をうまく分散することができず一定の個所に負荷がかかりやすくなります。

このような理由から、臼蓋形成不全の人は40代以降で変形性股関節症に進行しまう可能性があります。
ですが、40歳未満の若い世代で臼蓋形成不全から変形性股関節症に進行している症例は稀となります。

臼蓋形成不全が痛みの原因とは限らない

特に10代、20代の方に注意していただきたいことがあります。
それは多くの場合、「臼蓋形成不全 = 股関節の痛み」ではないこということです。
レントゲンなどで臼蓋形成不全が見つかった場合でも、若い世代の股関節痛の原因は他にあることが多いです。

可能性が高い病因としては以下の2つがあります。

  • 股関節インピンジメント障害(FAI)
  • グロインペイン症候群(鼡径部痛症候群)

40歳未満の方で股関節や股関節周囲に痛みがあり、臼蓋形成不全と診断された場合は、以下のページも参考にしてください。

股関節インピンジメント障害(FAI)
グロインペイン症候群(鼡径部痛症候群)

変形性股関節症とは

変形性股関節症は40歳以上の女性で発症しやすく、関節軟骨がすり減って摩耗、変性し、股関節に痛みを生じ、また股関節の可動制限を伴います。

変形性股関節症は進行性の疾患で、「初期 ⇒ 進行期 ⇒ 末期」と症状が重症化していきます。
関節軟骨は一度すり減ってしまうと元に戻ることはありませんので、初期の段階での対応が大切です。

変形性股関節症の原因は一次性と二次性があり、一次性は原因がはっきりとしないもので、加齢、肥満、スポーツによる過剰な不可などがあります。

二次性は、基礎疾患やケガが原因としてあるものです。多くの二次性の変形性股関節症は、臼蓋形成不全と先天性股関節脱臼が原因となりますが、その他にも股関節インピンジメント(FAI)、関節リウマチ、大腿骨頭壊死症、大腿骨頚部骨折なども原因となります。

初期の変形性股関節症は、このような症状があります。

  • 歩行時に股関節の付け根が痛い
  • しゃがむと股関節の付け根が痛い
  • 立ち上がる際に股関節の付け根が痛い
  • 車の乗り降りで股関節の付け根が痛い
  • 股関節が開かなくなった

変形性股関節症のバレエでの症状は

変形性股関節症は、40代以降の大人バレエさんやバレエの指導者に起こりやすい症例となります。
バレエのレッスンで以下のような初期の症状があります。

  • 前と横に足を上げると痛い
  • 開脚が以前より硬くなって痛みを伴う
  • 股関節の詰まり感が以前より強くなった
  • レッスン中に股関節の前の付け根が痛くなる
  • レッスン後に臀部の深部が痛くなる

バレエにおける変形性股関節症は、臼蓋形成不全由来として発症することが多いですが、その他にも股関節や股関節周囲の筋肉に負担をかけることで発症することがあります。

股関節や股関節周囲の筋肉に負担をかける原因となる不良姿勢やバレエ動作として、以下が考えられます。

  • 反り腰で固まっている
  • 骨盤が過度な前傾位で固まっている
  • 骨盤前傾や反り腰での過度なアンディオール
  • 骨盤前傾や反り腰でポワントワーク
  • 筋力不足によるポワントワーク
  • レッスン後のケア不足

一般的な病院での治療法

変形性股関節症は進行性の疾患です。
「初期 ⇒ 進行期 ⇒ 末期」と症状が重症化していきます。

臼蓋形成不全、若しくは変形性股関節症の初期の治療法は筋肉強化と物理療法などの保存療法が一般的です。

変形性股関節症が進行し日常生活が困難になってくると手術の可能性がでてきます。

一般的な整骨院、整体院での治療

整骨院、整体院では、臼蓋形成不全や変形性股関節症の診断はできませんので、病院受診後に患者様の意思で保存療法を選択された方が対象となります。

マッサージ、低周波、干渉波、超音波などの物理療法、筋力トレーニングが中心となります。

当院での治療方法

診断について

当院の場合も病院受診後に、患者様の意思で保存療法を選択された方が対象となります。

疼痛部位に対して

当院では、変形性股関節症の痛みや症状は、骨、関節の変形だけが原因ではなく、股関節周囲の筋肉の緊張や癒着が症状を引き起こしている可能性があると考えます。
それらを取り除くことで、痛みなどの症状を緩和できる可能性はあります。

施術のターゲットとなりえる部位へ手技療法、衝撃波(圧力波)治療器、ラジオ波治療器、スーパーライザー光線治療器、鍼治療などを用いてアプローチしていきます。

※痛みを緩和できる可能性はありますが、股関節の変形が治ることではありません。
※施術内容は患者様とカウンセリングをした上で決定していきます。一方的に施術内容を決めることはありませんのでご安心ください。
※鍼治療は希望者のみ行いますのでご安心ください。

骨盤に対して

アスリートやバレエダンサーは重心が前方へ移動している姿勢になりやすく、骨盤が前傾位で固まってしまい、骨盤体(腰椎と骨盤)を後傾することが苦手な人が多いです。

骨盤帯(腰椎と骨盤)の後傾方向へのモビリティ(可動性)を向上させていくことで腰部の筋肉や筋膜への負荷を軽減させることができると考えております。
そして、骨盤の捻れや開きの左右差を確認し、手技療法により骨盤(仙腸関節)を矯正します。

全身へのアプローチに対して

股関節に負荷がかかりすぎているということは、その背景には体の様々な箇所にエラー動作や歪みが隠れています。

例えば、背骨の可動域が少ない、骨盤の前傾が強い、膝の捻れがある、足首の捻れがある、偏平足があるなどです。
それらを整体、矯正手技にて改善することで、股関節に過剰にかかっている負荷を軽減させることができると考えます。

体幹の安定に対して

足を上げる動作など下肢を動かす際には、下肢の筋肉よりも体幹の筋肉(インナーユニット)が先行して働くことが正しい身体の使い方です。
インナーユニットとは腹横筋、横隔膜、骨盤底筋群、多裂筋のことを言います。

体幹の筋肉を先に収縮させ体幹を安定させてから下肢の筋肉を使った方が、体のブレが小さく運動効率がよいためです。
例えば股関節を屈曲する動き、バレエ動作でたとえると、ドゥバンへ足を上げるときは以下のような順序で働くことが理想的です。

【体幹の筋肉(インナーユニット) ⇒ 大腰筋(腸腰筋、腸骨筋) ⇒ 大腿直筋】

ですが、骨盤帯(腰椎、骨盤)や股関節に問題を抱えている多くの方は、体幹の筋肉(インナーユニット)が先行して働くことができず、大腿直筋や大腰筋(腸腰筋、腸骨筋)が先行して働いていることがあります。

このようになってしまうと骨盤帯(腰椎、骨盤)や股関節への負荷が強くなってしまい、ケガに繋がりやすくなります。
当院では、体幹の安定性とモビリティ(可動性)を向上していくためにバレエピラティスを行っています。

保存療法の可能性

保存療法で関節の変形を治すことはできませんし、骨や関節の変形がかなり進んでいて痛みが強い場合は保存療法では限界があると思います。

ですが、変形性股関節症の痛みは、骨や関節以外の股関節周囲の筋肉の緊張や癒着に原因があることも多く、そこに原因がある場合は当院で症状を軽減できる可能性はあります。
詳しくはそれぞれの治療ページをご覧ください。

クライアント様とカウンセリングを行いながら、以下の施術方法を組み合わせ、最善の方法を選択し、早期回復を目指します。

治療法

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